生身のライダーは要注意!ヒグマとの遭遇リスクが高い場所と時間帯
北海道ツーリングは雄大な自然との一体感が魅力ですが、その自然は野生動物たちの生息地でもあります。中でも北海道だけに生息する「エゾヒグマ」は、本州のツキノワグマよりも体が大きく、成獣のオスでは体長2メートル、体重400キロを超えることもある陸上最強の猛獣です。車であればボディがシェルターとなりますが、バイクは生身です。万が一遭遇した場合のリスクは非常に高いため、正しい知識と警戒心を持つことが何よりも重要になります。
ヒグマとの遭遇確率が特に高いエリアとして知られているのが、世界自然遺産である「知床半島」です。ここは世界的に見てもヒグマの生息密度が高い地域であり、道路脇の茂みや海岸線に姿を現すことが日常的にあります。また、知床に限らず、大雪山系や日高山脈を越える峠道、人里離れた林道なども注意が必要です。特に注意したいのが、道路の形状です。見通しの悪いブラインドコーナーを抜けた瞬間に、道路を横断しているヒグマと鉢合わせるというケースが報告されています。北海道の峠道は交通量が少なくペースが上がりやすいため、見通しの悪い場所では「先に何かいるかもしれない」と速度を落とす余裕を持ちましょう。
時間帯としては、薄暗い早朝や夕暮れ時がヒグマの活動が活発になるピークタイムです。この時間帯はエゾシカの飛び出しリスクも高まるため、可能な限り移動を避けるのが賢明です。また、春先は冬眠明けで空腹の個体が、秋は冬眠準備のために食欲旺盛な個体が活発に動き回ります。季節によっても危険度が変わることを頭に入れておき、事前に現地の目撃情報をチェックする習慣をつけると良いでしょう。
キャンプツーリングにおける食料管理とテント設営の鉄則
北海道ツーリングの醍醐味であるキャンプですが、ヒグマの生息域で野営をする以上、徹底した管理が求められます。ヒグマは非常に優れた嗅覚を持っており、その能力は犬の数倍とも言われています。数キロ先の臭いも嗅ぎ分けることができるため、キャンプ場において最も警戒すべきは「食べ物の臭い」です。
絶対にやってはいけないのが「テント内への食料の持ち込み」です。就寝中に枕元にパンやお菓子、未開封のカップ麺などを置いていると、そのわずかな臭いを嗅ぎつけたヒグマがテントを切り裂いて侵入してくる恐れがあります。食事はテントから離れた場所で済ませ、食べ残しや生ゴミは密閉できる袋やコンテナに入れ、臭いが漏れないように厳重に管理してください。バイクの場合は車のような密閉空間がないため、パニアケースなどのハードケースに入れるか、キャンプ場に備え付けの食料保管庫(ベアボックス)があれば必ず利用しましょう。もし保管場所がない場合は、木の高い位置に吊るすなどの対策が必要ですが、初心者には難易度が高いため、管理人が常駐しているキャンプ場や、電気柵が設置されている安全なサイトを選ぶことを強くおすすめします。
また、意外と見落としがちなのが、歯磨き粉や化粧品、制汗スプレーなどの香りです。これらもヒグマにとっては興味を引く対象となります。食料と同様にテント内には持ち込まず、バイクのトップケースなどに収納してください。調理に使用した食器やクッカーも、洗わずに放置しておくと危険です。食事後はすぐに洗い、臭いを消す努力を怠らないことが、自分自身だけでなく、周りのキャンパーや将来その場所を訪れる人々の安全を守ることにも繋がります。
もしものための「クマスプレー」と遭遇してしまった時の対処法
物理的な対策グッズとして、北海道ツーリングで必ず携帯したいのが「熊鈴」と「クマスプレー」です。熊鈴は音によってこちらの存在を早めに知らせ、突発的な遭遇(バッタリ遭遇)を防ぐ効果があります。走行中はエンジン音がありますが、休憩でバイクを降りて散策する際や、静かなキャンプ場では必ず身につけておきましょう。
そして、最終手段として命を守るのが「クマスプレー」です。これはトウガラシ成分を含んだ強力なガスを噴射するもので、ヒグマの目や鼻に強烈な刺激を与え、ひるんだ隙に逃げるための護身具です。ホームセンターやアウトドアショップで購入できますが、持っているだけでは意味がありません。いざという時に数秒で取り出せるよう、腰のベルトにホルスターで装着しておく必要があります。バッグの奥底に入れていては間に合わないからです。有効射程は製品によりますが5メートルから9メートル程度。風向きを考慮して噴射する必要があります。
万が一、ヒグマに遭遇してしまった場合の鉄則は「走って逃げない」ことです。背中を見せて走ると、ヒグマは本能的に獲物として認識し、猛スピードで追いかけてきます。その速さは時速50キロ以上とも言われ、バイクに乗っていない状態で逃げ切ることは不可能です。まずは落ち着いて立ち止まり、大声を出さずにヒグマの様子を伺います。ヒグマがこちらに気づいていない場合は、静かに後ずさりをして距離を取りましょう。もしこちらに気づいて近づいてきた場合は、クマスプレーを構えて噴射の準備をします。パニックにならず、目を見ながらゆっくりと後退することが生存率を高めます。バイク走行中に遭遇した場合は、刺激しないように徐行して通り過ぎるか、距離があるならUターンしてその場を離れてください。興味本位で写真を撮ろうなどとは決して思わないでください。
