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北海道「ライダーハウス」の基礎知識と利用マナー

チョッパーに乗る男性

北海道ならではの格安宿「ライダーハウス」の魅力と基本スタイル

北海道をバイクで旅していると、必ず耳にするのが「ライダーハウス」という言葉です。通称「ライハ」とも呼ばれるこの宿泊施設は、主にオートバイや自転車で旅をする人を対象とした簡易宿泊所のことを指します。ビジネスホテルや民宿とは異なり、営利を主目的としないボランティア運営や、食堂・土産物屋さんが空きスペースを開放しているケースも多く、その形態は実に様々です。かつて使用されていた鉄道車両(ブルートレインなど)を改装したものや、農家の納屋、廃校になった校舎を利用したものなど、ユニークな建物に泊まれるのも北海道ツーリングならではの体験と言えるでしょう。

最大の特徴は何と言ってもその宿泊料金の安さです。場所によって異なりますが、一泊あたり無料から1,500円程度で利用できる場所が多く、長期の北海道ツーリングにおいて予算を抑えたいライダーの強い味方となっています。ただし、低価格である分、サービスは最小限です。個室ではなく大部屋での雑魚寝や、二段ベッドが並ぶドミトリー形式が基本となります。プライベートな空間はほとんどありませんが、その分、同じ屋根の下に集まった旅人同士の距離が近く、自然と会話が生まれるのがライダーハウスの最大の魅力です。

その日のルート情報や絶景スポット、取り締まりの状況など、リアルな情報交換が毎晩のように行われています。中にはその居心地の良さと、気の合う仲間との出会いに魅了され、当初の出発予定を延期して何日も連泊してしまうライダーも少なくありません。こうした現象は、旅人の間では親しみを込めて「沈没」と呼ばれています。予定通りに進まないことも旅の面白さですが、あまりに快適すぎて北海道から出られなくならないよう、ある程度の自制心も必要になるかもしれません。

寝袋は必須?快適に過ごすために準備したいアイテム

ホテルや旅館とは違い、ライダーハウスを利用する際には事前の準備が必要です。最も重要なアイテムは「寝袋(シュラフ)」です。布団の貸し出しを行っている施設もありますが、基本的には「寝具なし・寝袋持参」が前提となっている場所が多いと考えてください。畳敷きの部屋やカーペット、時には板張りの床に銀マットを敷いて、その上で自分の寝袋にくるまって眠るスタイルが一般的です。夏場であっても北海道の夜は冷え込むことがありますし、衛生面を考えても使い慣れた自分の寝袋があると安心して眠れます。

また、快適に過ごすためにはサンダルも欠かせません。長距離を走った後のライディングブーツは蒸れて重いため、宿に着いたらすぐに足をリラックスさせたいものです。館内移動やちょっとした買い出し用として、軽量なサンダルを荷物の隙間に忍ばせておくと非常に重宝します。さらに、相部屋での宿泊となるため、周囲の音が気になる方は耳栓やアイマスクを用意しておくと良いでしょう。旅人のいびきや早朝出発する人の物音で眠れないという事態を防げます。

電源確保も重要な課題です。最近ではコンセントを使わせてくれるライダーハウスも増えましたが、宿泊人数に対してコンセントの数が足りないことは日常茶飯事です。スマートフォンやインカム、カメラのバッテリーなど充電したい機器が多い現代のツーリング事情に合わせて、三股タップや短めの延長コードを持参すると、一つのコンセントを皆でシェアでき、周囲からも感謝されるはずです。もちろん、タオルや歯ブラシ、シャンプーといったアメニティ類は置かれていないことがほとんどですので、銭湯セットとしてまとめておき、サッと持ち出せるようにしておきましょう。

相部屋での宴会や消灯時間など独自のルールとマナーを知ろう

ライダーハウスは、オーナーの好意によって維持されている場所や、旅人たちの善意で成り立っている場所が多く存在します。そのため、それぞれの宿には独自の「ルール」や「マナー」が存在します。最も大切なのは、そこが共同生活の場であるという認識を持つことです。

夕食後には、宿泊者同士で車座になってお酒を飲む「宴会」が自然発生することがよくあります。その土地の名産をつまみに、出身地も年齢も違うライダーたちがバイク談義に花を咲かせる時間は、何物にも代えがたい思い出になります。しかし、翌朝早くに出発する人や、静かに休みたい人がいることも忘れてはいけません。多くのライダーハウスでは消灯時間が決められており、その時間になったら宴会はお開きにして静かに寝る、あるいは照明を落とすといった配慮が求められます。盛り上がりすぎて深夜まで騒いでしまうのはマナー違反です。

また、ゴミの処理についても注意が必要です。基本的には「ゴミは各自持ち帰り」としている宿が多いです。格安で提供してくれているオーナーに負担をかけないよう、自分が出した缶や弁当の空き箱はバイクに積んで持ち帰るか、指定された分別方法を厳守して捨てるようにしましょう。チェックアウトの際には、自分が使った場所を簡単に掃除したり、整理整頓してから出発するのがスマートなライダーの流儀です。

中には「完全予約制」のところもあれば、「予約不可・早い者勝ち」のところもあります。人気のライダーハウスは夕方には満員になってしまうこともあるため、事前に電話で混雑状況を確認するか、早めの到着を心がけると安心です。女性ライダーの場合は、女性専用部屋があるかどうかも確認しておくと良いでしょう。ルールを守り、感謝の気持ちを持って利用すれば、ライダーハウスは北海道ツーリングをより深く、味わい深いものにしてくれるでしょう。