夏でも「低体温症」のリスクあり!北海道の雨を甘く見てはいけない理由
本州のライダーが北海道ツーリングで最も衝撃を受けることの一つが、「夏の雨の冷たさ」です。東京や大阪の夏であれば、雨に打たれても「濡れて不快」程度で済みますが、北海道ではそれが命に関わる危険に直結します。7月や8月であっても、雨天時には気温が15度以下、峠道では一桁台まで下がることも珍しくありません。時速60キロで走行すれば体感温度はさらに下がり、濡れた体から気化熱で体温が奪われ続けると、真夏でも「低体温症」に陥るリスクがあります。
手足がかじかんでブレーキ操作が遅れたり、思考力が低下して判断ミスを誘発したりと、体の冷えは事故の大きな原因となります。そのため、北海道ツーリングにおけるレインウェア選びは、単なる「雨除け」ではなく、「防寒着」としての性能も求められるのです。コンビニで売っているようなビニール合羽は、風圧でボタンが弾け飛び、バタつきで体力を消耗させるため、高速巡航には全く役に立ちません。必ずバイク専用に設計されたものか、それに準ずる高機能なアウトドアウェアを準備する必要があります。
選ぶ際の基準として重要なのが「耐水圧」と「透湿性」です。激しい雨風の中を走り続けるバイクの場合、耐水圧は少なくとも20,000mm以上が望ましいです。また、内側の蒸れを逃がす透湿性が低いと、自身の汗でインナーが濡れてしまい(汗冷え)、結局体温を奪われることになるため、このバランスが優れたウェアを選ぶことが快適なツーリングの鍵となります。
コスパ最強の「ワークマン」か、絶対的信頼の「バイク専用ゴアテックス」か
近年、ライダーの間で爆発的な人気を誇るのが「ワークマン」の「イージス」シリーズをはじめとする高機能ウェアです。最大の魅力は何と言ってもそのコストパフォーマンスです。上下セットで5,000円〜1万円程度で購入でき、耐水圧や透湿性もバイク利用に十分耐えうるスペックを持っています。特に「360°リフレクト」などのライダー向けモデルは、バタつき防止のアジャスターや、ブーツを履いたまま着脱できる裾の構造など、バイク乗りの要望を取り入れた設計になっています。予算を抑えたい学生ライダーや、年に一度のツーリングのために高額な出費は難しいという方には、ワークマンは間違いなく最強の選択肢です。ただし、耐久性や細部の作り込み(止水ファスナーの滑らかさや収納サイズ)に関しては、高価格帯の製品に譲る部分もあります。
対して、RSタイチやゴールドウインといったバイク用品メーカーが販売する「ゴアテックス(GORE-TEX)」採用のレインウェアは、上下で3万円〜5万円以上と高額ですが、その性能は別格です。「防水透湿素材の王様」と呼ばれるゴアテックスは、外からの雨を完璧に防ぎつつ、ウェア内の湿気を驚異的なスピードで排出します。これにより、長時間雨の中を走り続けても「中はサラサラ」の状態をキープでき、疲労感が段違いに少なくなります。また、バイク専用設計の歴史が長いため、前傾姿勢でも背中が出ないカッティング、グローブをしていても操作しやすい襟元、高速走行でもバタつかない袖の絞りなど、ライダーのストレスを極限まで減らす工夫が凝らされています。もし予算が許すのであれば、数年にわたって長く使える「投資」として、専用メーカーのゴアテックスモデルを選ぶことを強くおすすめします。
サイズ選びとメンテナンスで防水性能を維持するコツ
レインウェアの性能を最大限に発揮させるためには、サイズ選びが重要です。夏場はメッシュジャケットの上から着るためジャストサイズで良くても、北海道ではインナーダウンや厚手のジャケットの上から羽織るケースを想定しなければなりません。試着の際は、冬装備に近い服装の上から着用し、窮屈さがないか、突っ張りがないかを確認しましょう。特に膝や肘を曲げた時に生地が引っ張られると、そこから浸水しやすくなるため、少しゆとりのあるサイズを選ぶのが鉄則です。
また、どんなに高価なレインウェアでも、メンテナンスを怠れば性能は低下します。ツーリングから帰ったら、泥汚れをシャワーで洗い流し、陰干しで完全に乾燥させてください。汚れは撥水性を低下させる最大の敵です。そして、定期的に市販の「撥水スプレー」や「ニクワックス」等の洗剤を使ってメンテナンスを行うことで、水弾きを復活させることができます。
意外な盲点となるのが、袖口や襟元からの浸水です。ここをしっかりと閉めないと、毛細管現象で水が内部に侵入してきます。レインウェアの袖口をグローブの上に被せるのか、中に入れるのかはグローブの形状によりますが、隙間を作らないことが重要です。また、お尻部分はシートとの圧力で最も水が染み込みやすい場所です。長時間雨の中を走る場合は、レインウェアのズボンの上から、さらに防水座布団(ゲルザブなど)を敷くか、スタンディングで適度に水を逃がすなどの工夫も有効です。完璧な雨対策をしておけば、雨の北海道もまた、違った情緒ある景色として楽しめる余裕が生まれるでしょう。
